2006年05月30日

安楽死について

非常に重い題材だが、
あえて取り上げておく。

ライスシャワーの事故について書いた記事の
検索数が最近伸びている。
関心の高さが伺える。

なぜ「安楽死」しなければならなかったのか?
今一度、この問いに答えなければなるまい。

競走馬・・・サラブレッドは、
スピードを追求した結果の究極の馬種である。

サラブレッドは
自然界の配合ではあり得ないスピードを手に入れた。
その引きかえに、
自然界では生きていけないほど
身体は弱くなってしまった。
人の手が無ければ生きてはいけないのだ。

極限までスピードを追求した体。
その完成された体は、
その状態で完全なものであり、
怪我をしてバランスが崩れると
たちまち命にかかわる。

特に脚の怪我は致命傷になりやすい。

4本の脚で体を支えている状態が完全体であり、
もし、1本の脚が怪我をして使えなくなると、
3本脚で体を支えないといけなくなる。

それに耐えられるだけの脚の造りにはなっていない。

4本脚で500キロ近い馬体を支えているのだ。
それが、3本脚となると・・・

3本の脚に大きな負担がかかり、
脚の血行不全を起こす。
そこから脚が腐っていくという「蹄葉炎」を発症する。

「横たわっておけばいいではないか」
しかし、馬の体は横たわる状態を長期に続けられない構造なのだ。
皮膚が弱く、すぐに床ずれが起きてしまう。

自然界においても
脚を怪我した草食動物は生きていけないのだから。

そして草食動物の宿命として「逃げる」というのがある。
肉食動物から「逃げる」こと。
これが出来なくなったとき、草食動物にとってそれは「死」を意味する。
つまり“動けない”状態というのは、
草食動物にとっては「死」と同じ。
“動けない”ことは、人間が考える何倍も
馬にとってはストレスであり、
そのストレスが更なる病気を引き起こしかねない。





「人間の技術でなんとか治してあげられないのか?」

競馬関係者たちは、日夜その命題と闘っている。
サンエイサンキューにしても、
テンポイントやサクラスターオーにしても、
結果はあまりにも辛い悲劇であったが、
怪我をした彼らを助けたい人たちの闘いでもあった。

その結果の教訓として、
馬を苦しめない最善の方法として「安楽死」も
一つの選択肢として必要なのではないかと。

医療技術は日夜進歩している。
かつては救えなかったような骨折でも
治療して助かる例は増えつつある。

トウカイテイオーも
何度も骨折を繰り返しながら有馬記念を制した。

ヤマニングローバルは骨折部分をボルトで繋いで
その後に重賞2勝した。


またJRAは、
競走馬総合研究所などが、
安全に走る数々の工夫を行っている。



それでも、すべてが救えるわけではない。
どうすることも出来ない怪我の場合、
「安楽死」という苦渋の決断をしないといけない。

ライスシャワーの最期は、
立っていることがやっと。
それもマトモな状態ではなかった。
馬運車にも乗せられない状況で・・・
どうすることもできなかった。
(当時の生中継の映像はあまりに残酷で・・


サイレンススズカは粉砕骨折。
粉砕してしまってはボルトで止める技も使えない。
治療方法は無かった。


サラブレッドは「痛覚」が異常に発達しているという。
痛みに耐えられずに苦しみもがき、
衰弱していく馬を治療するのは並大抵のことではない。

テンポイントなどは500キロあった馬体も
闘病生活の中で300キロ台にまで落ちたと聞き及んでいる。

助かる見込みのない馬を治療することは、
馬にとっても関係者にとっても悲劇な場合もあるのだ。








アメリカで
無敗でケンタッキーダービーを制したバルバロ。
先日のこと、
そのバルバロが二冠目のプリークネスSで故障発生・・・

プリークネスS(動画)

場内の大歓声は一瞬にして悲鳴と嗚咽に変わった悲劇。
診断名は「第3中手骨顆部骨折、種子骨粉砕骨折」

競馬を知る人間なら、
この診断名が意味することも分かるだろう。

万に一つも助かる見込みもないほどの大怪我だ。

しかし、アメリカ競馬界の至宝を死なせまいと
プロジェクトチームが組まれ、
治療するという決断が下された。


あまりにも絶望的な状況の中で
手術は成功し、なんと回復の兆しを見せているという。

全米が注目、バルバロの治療−スポニチ


医療技術の進歩に目を疑いながらも、
このニュースは嬉しい限り。

まだ「蹄葉炎」の恐怖から逃れたわけではないが、
なんとか回復してほしい。。





もう悲劇の物語などいらないのだ。


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posted by すだち at 22:23| Comment(5) | TrackBack(0) | 競馬論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ふざけるな!!
身勝手ばかり言いやがって!!
サラブレットは速さを追求した?完成された?馬がそうしてくれと頼んだのか?人間が勝手にそうしただけだろ。自分達の利益の為に、無理やりそうしたんじゃねぇか。それを、いかにも当たり前のように言いやがって。何様なんだよ人間は?
そもそも、競馬なんてものは、どんなに奇麗事をぬかしたところで下衆のやることだろうが。
例え、合法だろうが、国が運営していようが、世間が認知しようが、黒を白だ などと言うのは間違っている。
そんな、倒錯したなかで起こる悲劇は全てが必然のはず。つまり、全て予測出来るもの。現に、安楽死される馬がいると言う事実がある。
それは皆、人の快楽、人の欲望、如いては人の営みの為。決して馬の為などではない!!変な美談や偽善はやめてくれ。
今、競馬をやる全ての人に自覚してほしいのはそういう事・・・
競馬は、決して美しくもないし、いい事ではないということ・・・
そうでなければ、真の意味での 悲劇 の回避はむりだろう・・・・・・
Posted by 沖山 豪 at 2008年03月10日 00:01
☆彡沖山豪さん

わざわざの書き込みありがとうございます。おっしゃるとおり、「サラブレッド」と呼ばれる種は人間が人為的に作り出した個体です。人間の自然に対する大罪かもしれません。しかし、作りだしてしまった以上、その種を絶やさないようにすることも人間の使命だとは思いませんか?
では競馬などせずに自然に帰せとおっしゃいますか?しかし、サラブレッドは人為的に作られたために自然界で生き抜くだけの力はありません。だからサラブレッドと人との共存関係を切ることはできないのです。

競馬の表舞台は華やかに見えますが、その裏にはそうでない部分もあるのはたしかです。でも、人間社会は結局つきつめていけば、すべては表と裏の社会ではないでしょうか。競馬を行うことは「人の快楽、人の欲望、如いては人の営みの為」・・・そのとおりです。でも、それは人間社会においてすべてがそうではないでしょうか?
それを否定することは人間の存在自体を否定することになるのではないでしょうか?

一頭の馬が怪我をした・・あるいは亡くなったと知れば「悲しい」と思うのは人として正常な反応ではないですか?
「悲しい」と言っている人に「変な美談だ」「偽善だ」と言うほうがどうかと思いますが・・




ただ、今回の沖山 豪さんの意見は
競馬をするすべての人に
「命」について考えてもらうための
一つの問題提起になるかと思っています。
沖山 豪さんの書き込みに感謝します。
ありがとうございました。
Posted by すだち@管理人 at 2008年03月10日 00:53
ありがとう。
Posted by at 2013年05月30日 12:30
日本国内だとバーバロと表記しないとまずそう。
バルバロという名前の登録馬がいました。
Posted by at 2013年06月04日 06:45
この記事は2006年に書かれたもので、その当時の表記にしたがっています。
Posted by すだち@管理人 at 2014年10月23日 14:43
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